HOT TO RUN FASTER

さらに速く走るために

第3回

速く走るためのポイント -その2-

今回は柔軟性にまつわる話。柔軟性というと、「立位体前屈」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。これは膝を曲げずに両手を前方の床につける運動ですが、このようなストレッチングを走る前に準備運動として行なうことも多いですよね。

ところで、「立位体前屈」は上半身の柔軟性を表すものだと思われがちですが、どこまで手が届くかは実は下半身の柔軟性と大きく関わっています。腿(もも)やふくらはぎの筋肉の準備運動が不十分な状態にあると、前屈をしたときに脚(あし)の筋肉が引っ張られることで、かえって力が入ってしまいカラダが固くなってしまいます。しかし、下半身の準備運動を入念に行うことで脚の筋肉が伸びて、楽に前屈することができるのです。

ためしに、脚を前後に開いて開脚の姿勢で股関節のストレッチングをしてみましょう。この運動をすると、腿の前側とお尻の辺りの筋肉が伸ばされるのを実感すると思います。その姿勢から、次に両手を地面に付けてしばらく筋肉を伸ばしてストレッチングをします。続いて手から肘までの部位(前腕部)を地面に付けてみましょう。これでさらに脚の筋肉が伸ばされたと思います。続いて左右の脚を前後で入れ替えて、さきほどと同様のストレッチングをします。

次に皆さんがよく行う、アキレス腱を伸ばすストレッチングをします。この運動では、ふくらはぎの筋肉が伸ばされます。ただし、ふくらはぎの筋肉には足首を伸ばす働きをする筋肉と、膝を曲げる働きをする筋肉の二種類の筋肉があるため、この運動を行う際には、後ろ側の膝を伸ばした状態で行い、さらに膝を曲げた状態で行います。このようなストレッチングを入念に行うことで脚の柔軟性は高まり、「立位体前屈」の成績は向上します。

脚の柔軟性は走る際の歩幅(ストライド長)にも影響します。そして、走る速さはストライド長×ピッチで決まりますので、柔軟性が高まれば走る速さにも必ず影響します。また、柔軟性の向上はケガの予防にも不可欠です。下半身のストレッチングを入念に行い、走力の向上とケガの予防につとめましょう!

ところで、ウォーミングアップとしての柔軟運動は、筋肉が力を出しやすくしたり、怪我を防止したりするために重要です。でも最新のスポーツ科学研究では、スタートの直前に柔軟運動を行うと、筋力が弱まって、走るのが遅くなってしまう可能性があることも分かってきました。スタートを待つ直前のストレッチは控えるようにすると良いかもしれません。