HOT TO RUN FASTER

さらに速く走るために

第25回

「腕の動きを止めないで!」

スポーツの秋と呼ばれるこの季節には、運動会の練習や陸上教室などでお子さん達の走る姿をいつもより見る機会が増えます。そのなかで、以下のようなことによく気がつきます。
スプリントドリル(いわゆる腿上げ)やラダートレーニングは素早い脚の動きを身につけるのに有効な練習であることがよく知られており、私が指導する教室などでも、お子さんによく行ってもらう練習のひとつです。しかしながら、これらの練習では“脚を素早く動かそうとして、腕の動きが止まってしまう”お子さんが多くいます。これは、脚の動きに集中してしまうあまり、腕振りに神経が回らなくなってしまうのか、あるいは腕に力を入れて固定した方が脚をより素早く動かすことができるのか、のどちらかであると考えられます。いずれにしても、このような動きをするお子さんの場合、脚の動きをコントロールするのに腕振りは使っていないことが予想されます。
しかし、ランニング動作では、脚の動きは腕振り動作と連動しており、腕を素早く振ると脚も素早く動くようになるものです。また、このような動きは、単に脚を早く動かすだけではなく、上半身がブレるのを抑えてくれると考えられています。脚を素早く動かそうとすることで、それに伴って腕の動きが止まってしまったり、小さくなってしまったりするようでは、これらの練習の意味がなく、せっかくの練習が実際のランニングに結びつきません。
スポーツの動作では、手や脚の動きはそれぞれ独立のものではなく、胴体の動きも含めて、それぞれが連動することで、しなやかな動きやダイナミックな動きとなるものです。ですから、腕振りによる脚の動きのコントロールを身につけることは、早く走るためのフォームを身に付けるために必要な動きづくりであると言えます。最初、慣れるまでは多少脚の動きが遅くなってしまうかもしれませんが、腕で脚の動きをコントロールする感覚を身につけましょう。