HOT TO RUN FASTER

さらに速く走るために

第13回

柳谷先生への質問「足の速さは遺伝で決まってしまうのですか?」

Q.柳谷先生への質問

幼稚園4歳男の子についての質問です。兄が12歳なのですが、とても走りが遅いです。弟ですが、あまり早くはありません。
これは遺伝するのでしょうか?それとも、トレーニングである程度はやくなるものでしょうか?おしえてください。

A.柳谷先生からの答え

走りの早さには、カラダの大きさ(身長や体重)、筋肉の性質、心肺機能など、様々な要因が影響します。これらの要因は、遺伝子により影響を受けることが判ってきています。つまり、走りの速さは、ある程度は親から子へと遺伝する可能性があるということです。だだし、走りに影響する遺伝子はたくさん有り、ただひとつの遺伝子だけでは決まるわけでは無いということにはご注意ください。

短距離走を速く走るには、瞬発的なパワーを発揮する能力が必要となるのですが、この能力にはアクチニン3という遺伝子が影響します。この遺伝子を調べると、パワー発揮が得意な型(R型)苦手な型(X型)、そしてその中間の型(RX型)に分類することができるのですが、これまでの研究により、オリンピックのパワー系種目に出場した選手の殆どが、パワー発揮が得意な型(R型)中間の型(RX型)であることが報告されています。

ただし、私達の研究において、小学生200名あまりを対象としてこの遺伝子型と短距離走のタイムの関係を調べたところ、遺伝子型と短距離走タイムには関係が無いという結果となりました。

遺伝子型によりタイムの差が見られなかった理由としては、この遺伝子が今現在のパワーを表すものではなく、パワー系の練習・トレーニングを実施した時のトレーニング効果の高さを表すものであるということが考えられます。

つまり、R型の遺伝子を持つお子さんは、みんなと同じ練習を行ったとしても、他の人よりもその効果が現れやすいということになります。
逆に、普段から練習を行なっていなければ、R型の遺伝子を持っていても、走る速さにはX型遺伝子の人と差が生じないこともあるわけです。また、ちゃんと練習を行なっていれば、遺伝子型に関係なく、ある程度の効果は得られることも研究により明らかにされていますので、たとえ、X型遺伝子であったとしても、マジメに練習に参加していれば、それなりの効果が得られると思われます。現に私の周りにも、遺伝子はX型なのに日本代表選手になっている人もいます。

子どものうちは、低学年の頃からカラダが大きなお子さんもいれば、この頃は小さくて高学年になると急激に大きくなるお子さんもいて、人により様々なです。前者のような早熟タイプの場合、幼い頃はスポーツの能力に秀でているものの、カラダの成長の伸びが緩やかとなると他のお子さんに追いつかれることも多々あります。また、小学生の頃はカラダが小さかったのに中学生になると大きくなり、将来はプロのスポーツ選手になる例も多々あります。ですから、今の能力に一喜一憂することなく、暖かく見守りながら応援することも必要なのかもしれませんね。