第6回
瞬足
瞬足

子どもの体力が回復傾向にある?

「子どもの体力が回復傾向にある」体育の日のニュース番組ではそんな話が流れていたのをご存知でしょうか。

文部科学省では、毎年、全国のお子さんたちの体力を調査し結果を集計して、その結果を次年度の体育の日に発表しています。
調査によると現代のお子さんたちのカラダは、お父さん・お母さんたちが未だ子どもだった昭和50年代頃の小学生のカラダと比べると、僅かながら大きくなっていることが報告されています。例えば11歳の男の子の場合、昭和54年度の身長と体重の平均値はそれぞれ142.9cm, 36.3kgであったのに対して、平成21年度の平均値は145.1cm, 38.4kgといずれも向上しています。同様に、女の子の場合には、144.9cm, 37.3kg(昭和54年度)から146.9cm, 39.0kg(平成21年度)へと向上しています。文部科学省の報告によると,その理由の一つとしては,「生活が豊かになり、栄養のある食べ物がたくさん食べられるようになった」ということがあげられています。

現代のお子さんたちのカラダが,昔に比べると大きくなっていることは大変喜ばしいことなのですが、一方で、運動能力は横ばいもしくは低下していると言われています。同様の文部科学省の調査によると、11歳男子の50m走平均タイムは、昭和54年度の8.9秒から一時期は低下したものの,平成21年度には再び8.9秒となり昭和54年度の値と並びました。これに対して、女子の場合は昭和54年度の9.1秒からその後は低下が続き,昨年(平成21年度)は9.2秒と昭和54年度の値に近づいたことが報告されています。これが,冒頭に述べた「子どもの体力が回復傾向にある」ということのようです。

一方で、ソフトボール投げの平均距離をみると,男子の場合は35.3m(昭和54年度)から30.6m(平成21年度)へと約5メートルもの減少を示し、女子の場合には30.6m(昭和54年度)から17.8m(平成21年度)へと約13メートルのも低下を示しています。つまり,短距離走の能力は回復した兆しが見られるものの,ボールを投げる能力に関しては、昔の子どもに比べると今のお子さんたちは相当に低くなっていると言えます。これらのデータについて,文部科学省では,「昔に比べて生活が便利になり,生活の中で歩いたり体を動かすことが少なくなってきているから」そして「外遊びやスポーツの重要性を学力の状況と比べ軽視する傾向が進んだことにある」と説明しています。

これらのデータについて,あくまでも私見ですが,私なりに次のように色々と考えてみました。カラダが大きくなると、重くなったカラダを運ばなくてはならないために,その分、筋力も必要になってきます。カラダが大きくなったのに伴い筋力も高くならなければ、走るタイムは遅くなってしまいます。この為に、数年前のお子さんたちのタイムは低下傾向にあったのではないでしょうか。ただし,身長の伸びに伴い,現代のお子さんは脚長やストライド長(歩幅)も伸びたことが想像できます。ストライド長の伸びは走スピードを高める大きな要因となりますので,筋力さえ高まれば早く走ることが出来るようになります。これが、最近のお子さんの50m走タイムが回復してきた理由ではないでしょうか。

一方、ソフトボール投げの距離が低下した理由としては,腕や肩の筋力が低下したことも考えられますが、それだけではなく、サッカー人気の高まりなどにより,特に男の子の場合は野球をするあるいは物を投げる機会が減少した極端に減少したことが考えられます。ただし、野球に比べると、サッカーは走る時間や距離が多い種目ですから、そういう観点で言えば、サッカー人気の高まりは悪ではなく、それにより子どもたちの走力を高めることにもつながったと言えるのではないかなとも思います。

また、私たちが子どもの頃(昭和50年代)には,“瞬足”のような“早く走れる魔法の靴”は当然存在せず、多くのお子さんたちはいわゆる“ズック”といわれるような,“ヒモもマジックテープもついていない、靴底も薄い靴”を履いていた気がします。これに対して、“瞬足”をはじめとする現代の靴の多くが、とても走りやすそうに感じますし,あんな靴を履いていたら,私ももっと早く走れたのではないかと思ったりします。そして靴そのものの機能も重要ですが、早く走ることが出来る靴を選んでまで早く走りたいとお子さんが思うようになった意識そのものが,子どもの走力が回復した一因なのではないかなと思います。

難しい理論はおいといて、短距離走であってもしっかり呼吸をしてリラックスを心がけましょう。