第16回
瞬足
瞬足

スタート後、スムーズに加速するために

お子さんの短距離競走を見ていると、スタートの反応は悪くないのに、スタートダッシュでなかなかスピードに乗ることができない様子を目にすることがあります。

ところで自動車をマニュアル・トランスミッションで運転したことがある大人の方なら分かると思いますが、自動車の場合には、スタート直後には小さなギア(歯車)を高回転で回します、そしてスピードが上昇してくるにしたがって少しずつ大きなギアにチェンジして、回転数も低回転になってきます。これが、いきなり大きなギアから走りだそうとすると、上手くスピードに乗ることが出来ないばかりか、場合によっては、エンジンはストライキ(エンスト)を起こすはずです。

短距離走の場合、走るスピードはピッチ×ストライド によって決まりますのでクルマと同じことが言えます(ピッチは1秒あたりの歩数、ストライドは一歩の長さです)。クルマの場合はギア(シフト)と回転数(タコメータ)でしたが、短距離走の場合は、それぞれがストライドとピッチに相当します。スタート直後に大きなストライドで走ろうとすると、上手くスピードに乗ることができません。これは、大きなストライドで走るために強い筋力が必要となるためです。子どものように筋力が低い場合には、この影響はより大きくなり、本来の最大スピードまで到達することなくゴールしてしまう可能性もあります。

そこで、スムーズに加速するためには、スタート直後には 多少短めのストライドで、ピッチをあげて小刻みに走ります。そしてスピードに乗ってきたら徐々にストライドを伸ばして行きます。そして中間疾走でトップスピードに到達した時には、ピッチを落として、大きめのストライドで走ります。

このイメージ、大学生や大人の方に伝える時には自動車や自転車のギア・チェンジを例にすると非常に伝わりやすいのですが、特にクルマに興味の無いお子さんには正直言ってなかなか伝わりにくいようです。しかし、保護者の方や指導者の方がイメージを理解した上で、ピッチとストライドの割合を考えながら「もっと小刻みに脚を速く動かす」などと伝えると。走りが格段に変わるようです。ぜひ、試してみてください。

また、最大スピードは成長に伴い増大しますが、その背景にはストライドの増加が大きく貢献することが知られています。年齢とともに身長が伸び、脚の長さも長くなるためにストライドが長くなるわけです。通常は身長の伸びとともに筋力も向上するのですが、最近のお子さんの中には身長の伸びが早くて、筋力の増大が追いつかないお子さんも多いようです。このような状態では、体重の相対的な比率が大きくなるため、やはりスピードに乗ることができないことがあります。そんな時には、スタートから加速する段階ではストライドを短めにして、ピッチを上げることを意識させると上手く加速することができるようです。